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副業・兼業

はたらき方

自分にとっての“いい副業”とは? はたらき方改革コンサルタントが提唱する「キャリアの棚卸し」のすすめ

記事のまとめ

  • 短時間で成果を上げるためのタイムマネジメント法は3つ。「一日単位」で時間の使い方を考えること、無駄な業務を「やめる」習慣をつけること、はたらく仲間との率直なコミュニケーションをすること

  • 本業にプラスをもたらす、心身ともに充実する副業に出会うポイントは、一緒にはたらく「人」に信頼がおけるかどうか

  • 副業に挑戦してみたい理由が「満たされたい」ことであれば、本業も含めたキャリアを棚卸しし、自分自身の価値に気づくことが第一歩

本業と副業を「9:1」のバランスで両立している、株式会社ワーク・ライフバランスの取締役 兼コンサルタントの大塚 万紀子さん。

副業として行っている事業、パーソナルコーチング専門「Office Bouquet(オフィス ブーケ)」を立ち上げる際には、一年以上悩み葛藤したといいます。ところが実際にスタートすると、本業の組織外ではたらいたことで、本業の魅力をあらためて認識しました。

本業と副業のほか、趣味や子育ての時間もしっかり確保するという大塚さんは、どのようなタイムマネジメントを行なっているのでしょうか。短時間で成果を出すためのポイントや、「お金のために時間を切り売りする」イメージがある人もいる副業で疲弊してしまう理由、本業にプラスをもたらす副業との出会い方について伺いました。

短時間で成果を出す3つのタイムマネジメント術

——株式会社ワーク・ライフバランスには有給休暇のほかに、個人が自由に使える「新しい休み」が年間36日あり、大塚さんはその休日を使って副業をされているそうですね。

大塚氏:「新しい休み」は、一般的な有給休暇で対応しにくい事象が起きた時、本人が毎回「〇〇の事情で休ませてください」と申請することの息苦しさや、精神的・心理的な抵抗感で失われる労力・マイナスパワーを取り除くために生まれた休暇です。

例えば不妊治療や介護、病気や育児など、他の人にあまり知られたくないセンシティブな理由で利用する人もいますし、副業や自分自身のスキルアップに充てるメンバーもいます。当社にはいわゆる日銭のため・お給料を補填するための副業をしているメンバーは恐らくおらず、あくまでも副業は、「ワーク・ライフバランスへの還元」という大きな循環の中での、選択肢のひとつだと思ってもらえていると思いますね。

私の場合は、例えば本業で9時半から18時まで活動する日が週に4回あったとしたら、週に1回は、「新しい休み」や有給休暇を使って半休を取ります。出張などで、本業が長期間休めないときにも、振替休日をとり、副業先の研修やパーソナルコーチングの時間に充てることもあります。

本業「以外」の時間を副業に充てるのではなく、本業でのはたらく時間を副業に合わせて調整するため、休息や趣味の時間を削らなくて済んでいます。

「それなりに忙しいけれど、すごく楽しい人生を送らせてもらっている」と花のような笑顔で話す大塚さん(写真提供:株式会社ワーク・ライフバランス)

——ワーク・ライフバランスコンサルタントとして、短時間で成果を上げるための時間の使い方について教えてください。

大塚氏:私たち自身も取り組んでいることを3つ挙げますと、ひとつは、時間をどう使っていくかを「一日単位で」考えるトレーニングを積むということ。私たちは朝出勤すると、一日の業務をどう組み立てるのか? の計画を立てて、それを全社で共有しています。ですので、私がどんな一日を過ごすのかが、30人の社員全員に見える状態になっています。

もうひとつは、会社の風土として「これは無駄な仕事だな」と感じたらすぐにメンバー同士で共有し、相談のうえで「やめる」ことが習慣化しています。生産性を高めるために、私のような役員だけではなくて、メンバー皆でアイデアを出し合うようにしています。

最後は、一緒にはたらく仲間に変に気を回さない、忖度しないということ。そこに時間を使って業務効率が落ちてしまうくらいなら、直接「◯◯さんはどう思っているの?」と聞けば、2〜3分で解決します。特にテレワークでは、相手の顔が見えないので気を回してしまいがちですが、お互いに配慮しながら、率直なコミュニケーションを心掛ける。実はこのことが、生産性を高めるのに一番効果的かもしれません。

パーソナルコーチングのオンラインセッションの様子(写真提供:大塚 万紀子氏)

大切なのは、副業相手を信頼できるかどうか

——従来の副業は「お金のために時間を切り売りする」イメージがありましたが、近年キャリア戦略のために心身ともに充実する「プロジェクト型の副業」が注目されています。大塚さんの副業であるパーソナルコーチング事業はまさに後者ですが、こうした副業に出会うためのポイントはなんだと思われますか?

大塚氏:大切なのは2点。まずは副業先のお相手が信頼のおける方なのか、そして、その方のことをご自身が好ましく思っているのかということです。副業はまだまだ黎明期で、副業相手と一緒に乗り越えなければいけないことも多いです。調整しなければならない法制度もたくさんあります。

——具体的にどんなことでしょうか?

大塚氏:私自身はワーク・ライフバランス社の制度である「新しい休み」を使って副業することで、はたらきすぎを防止しています。しかしどの企業にも当てはまるシチュエーションではないと思います。例えば副業実践者には、はたらき方をどうマネジメントするか、本業副業先の情報管理の問題……さまざまな課題があります。私が、信頼のおける方からご紹介される案件しかお引き受けしないようにしているのは、そうした理由からです。

もったいないと感じる事例は、「なんのために副業しているのか?」を、ご本人が認識しきれていないにもかかわらず、副業を一度始めてしまったからやめられないと、闇雲に続けてしまっているというケースです。特に体力的に厳しい、睡眠時間や休息時間を削ってやらなければならないような副業は、中長期的に見て、デメリットでしかありません。

奈良県の研修事業で講師をする大塚さん(写真提供:大塚 万紀子氏)

大塚氏:特にミドルシニア世代に関しては、体力が下降していく時期なので、20代のころの自分と同じように頑張り過ぎてしまうと心身に限界が訪れます。瞬間的には“楽しい”と感じても、無理をしているうちに“やらなきゃよかった”と感じる日が来る。私も、自分にとって最適なバランスを理解しているので、一定の副業量を超えたらお断りするようにしています。本業と副業先、どちらでも成果を上げるには、心身ともに常にいいコンディションでいることが大事だと思っています。

——とはいえ、実際にやってみなければわからないケースもありそうです

大塚氏:そうですよね。最初は一つひとつの副業を、短期間の契約にしておくのがおすすめです。スポットでお手伝いをしてみるとか、一ヶ月間だけやってみるなど、短くお付き合いをしていくことが重要だと思います。

合わないと感じた副業をずるずると続けないためには、1〜2カ月に一度、副業先と現状を振り返る機会を持っておくといいですよ。当社でも私を含め、副業をしているメンバーには月に一度、きちんと睡眠を取れているか?などの確認が、本業の会社側から必ずあります。

キャリアの棚卸しで「自分自身の価値」に気づく

——では、実際に副業をスタートするにあたって、注意したほうがよいことはありますか?

大塚氏:実は副業で行っているパーソナルコーチング内でも、クライアントさんから「本業で成果が出ないから副業で満たされたい」「収入を補填したい」というご相談をいただくことがあります。

ただ私は、そうした副業の始め方はうまくいかないと思っています。

——「満たされたい」という気持ちから始める副業がうまくいかないのは、なぜでしょう?

大塚氏:「満たされたい」ということは、今やっていらっしゃるお仕事の棚卸しができていないことの裏返しでもあると思いますね。本業で得られているスキルや、成長しているポイントを、ご自身の中でしっかりと認識できているかどうか。

私がパーソナルコーチングでお手伝いしているのもまさにその部分で、「今の仕事に意義が見出せない。でも、社内の人間にそれを話せる立場ではない。大塚さんに対話の相手になってほしい」とおっしゃる方に、「最近チャレンジしたことはなんですか?」「些細なことでもかまわないので、自分を褒めるとしたらどんなことですか?」と聞いていくと、「案外いろいろなことをしているな」「自分、頑張っているな」と皆さん(本業での自分の価値に)気づかれますね。

「意外と現状も充実しているのかもしれない」という気持ちを抱くためにも、今の仕事に対する棚卸しは、すごく大切なことだと思います。その上で、「満たしたい欲」を解消するためだけではない副業を考え始めることが理想です。

パーソナルコーチングで使用するコミュニケーションカード(写真提供:大塚 万紀子氏)

——コーチング以外に、自分自身でキャリアの棚卸しをするためにはどんな方法があるのでしょうか?

大塚氏:まず「書き出す」ことは有効です。そのうえで「第三者」とともに振り返っていく、このセット技がやはり一番だと思います。

というのも、経営者・リーダークラスの方は「成果が出ているか?」「株主や従業員に約束したことは達成できているか?」といったKPI(業績評価の指標)にかかわる問いや答えの書き出しには慣れているのですが、一方で、「今、どんな気持ちですか?」といった「自分の感情」についての問いには、戸惑う方が多いです。周囲の感情についてはよくよく観察されていますが、ご自身のことは「ああ、忘れていた」と。

それを「怒っていらっしゃるんですね」「寂しいんですね」などと対話を通じて紐解いていくと、強化したほうがよいスキルや、本当は学びを得たい、でも本業の役割からは逸脱してしまう……といった分野が見えてきます。すると、「じゃあ副業でやってみよう」と、副業を本業の可能性を広げるための手段として捉えられるようになると思いますね。

——キャリアの棚卸しをすることで、あらためて本業での自分の価値に気づき、前向きな気持ちで副業への一歩を踏み出すことができるのですね

大塚氏:本業で成果を上げることにつなげていけるかどうかがとても大切だと思いますので、その視点を忘れずに取り組むようにすると、「視野が広がる」という意味で、副業はメリットが大きいと思いますね。

そのためにもご自分の強みや弱み、これまでのキャリアや実績で今後も活かしていきたいものは何か?を明確にすることが第一歩ではないでしょうか。

人脈やチャンスは、本業に真剣に向き合うことで広がっていきます。実は本業をおろそかにしないことが、「いい副業」が舞い込んでくるきっかけになると私は思っています

(書き手:原 由希奈 / 編集:永見 薫)

大塚 万紀子

株式会社ワーク・ライフバランス 取締役・パートナーコンサルタント

大学院卒業後、新卒で楽天株式会社に入社。その後2006年に、株式会社ワーク・ライフバランスを小室 淑恵とともに創業。高いコミュニケーション力やコーチングスキルを生かし、売上利益に貢献するさまざまな働き方改革を効率的に遂行するコンサルティングの先駆者。心理学や組織論等をもとに多様性をイノベーションにつなげることが得意。経営者から“深層心理まで理解し寄り添いながらも背中を押してくれる良き伴走者”と厚い信頼を得る。副業実践者でもあり、個人の事業としてパーソナルコーチング専門「Office Bouquet(オフィス ブーケ)」を営む。二児の母。

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