インタビュー

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副業・兼業

地方副業

東京と福岡、行き来をしながら副業に取り組む。地方副業の可能性と始め方

記事のまとめ

  • 地元である九州に帰るために退職の意思を伝えるも、福岡で暮らしながら仕事を続けたらいいと背中を押され、現職東京オフィス所属のまま福岡へ暮らしの拠点を移した

  • 経営者やコーポレート関連業務をする人たちに課題を聞いて回ったことが、副業やコミュニティ作りにつながった

  • どこで暮らしていてもコミュニケーションや対話が大切で、オンラインが発達しているものの、直接会うことで協業のスイッチになることが多い

近年、副業の推進やリモートワークの浸透により、仕事とプライベートの両立が可能になる選択肢が増えています。多様な選択肢から今の自分にフィットした環境を選び取り、福岡に暮らしの拠点を持ちながら東京で働き、地方副業をしているのが、オイシックス・ラ・大地株式会社 経営企画部長の三浦 孝文さんです。

三浦さんは、関東在住で同社の東京オフィスに勤務していましたが、今から約1年半前に家庭の事情で福岡県へ移住します。現在は、福岡の自宅と東京のオフィスを行き来するという形で勤務しています。同時に福岡の地場企業での副業を開始。スタートアップの経営アドバイザーなど、地元の複数企業に関わっています。一体どのようにして福岡で副業を獲得していったのでしょうか。くわしくお話を聞きました。

仕事を辞めて、地元・九州に戻ろうと思っていた

―― 現在、福岡と東京を行き来しながら仕事をしているそうですね。はたらき方についてくわしく教えてください。

三浦氏:福岡に暮らしの拠点を移しましたが、現在も1ヶ月のうち2週に1回のペースで上京し、月4〜5日以上は東京オフィスにて勤務しています。月曜日の朝一番に福岡から飛行機で東京へ移動し、火曜日か水曜日の夜には福岡へ戻ることが多いです。そのほかはリモートで仕事をしており、その生活を1年半ほど続けています。

―― 会社ではどのような仕事をしていますか?

三浦氏:現在は当社の経営企画部にて、会社の次の成長を見据えた経営の仕組み作りなどを行っています。具体的には、企業としての中期および年度の経営計画を定め、さらに各部門の計画策定にまで結びつけるといった部分の、事務局的な役割ですね。さらに戦略や目標をいかに社内に浸透させ、活躍人材を増やせるか、そのための社内コミュニケーションの推進やHR部門との連携も、業務の掌握範囲としています。

私が入社した約7年前は、社員数は200名程度、売上は200億円ほどだったのが、今は社員数は1000名に増え、売上も1,000億円を超えています。組織が成長していく変革期にある中で、次の成長フェーズにふさわしい経営の仕組みをどのように作っていくのかを考え、日々試行錯誤しています。

―― なぜ福岡に移住されたのでしょうか?

三浦氏:私は大分県出身で、妻が佐賀県の出身です。社会人になって12年ほど東京で過ごし、「いつかは九州に戻りたい」「地元に貢献したい」と考えていました。とはいえ、まだずっと先のことだと思っていたのですが、そのタイミングで家族のことなどライフステージの変化があり、現実的に検討し始めました。ちょうどコロナ禍で、はたらき方や暮らし方の選択肢として、移住やリモート勤務が世の中に浸透し始めていたことも後押ししましたね。

私は当初、会社に退職する意思を伝えました。ところがありがたいことに、現職に所属しながら二拠点生活をするという、現在のはたらき方を提案してもらい、今に至ります。

福岡発スタートアップ企業で、経営アドバイスの副業も

―― 現在、福岡では副業もしていると聞いています。どのような仕事内容なのでしょうか?

三浦氏:九州朝日放送(以下、KBC)が設立した、株式会社Glocal Kというスタートアップで、組織経営アドバイザリーをしています。代表の持留が中心となって立ち上げた、福岡・九州の企業や自治体のブランディング支援に取り組む企業です。彼は、元々KBCの報道部の編集長や、海外特派員の経験を持つ方。KBCは放送で培ってきたメディアの視点を活かしながら、地域資源を活かすブランディングや、課題解決を支援しています。

私は同社で、ビジョン・ミッションの策定をワークショップ形式で実施したり、経営計画や事業計画の策定支援をしたりなど行っています。また、組織のルールづくりに伴うアイデアの壁打ち相手になることもあります。同社で副業をすることで、私自身も地域での人のつながりが増え、福岡や九州の可能性や地域企業ならではの課題を、よりリアルに知ることができています。

兼業先の株式会社Glocal Kの皆さんと、KBCの前で(画像提供:三浦氏)

―― どうやって、この仕事を獲得できたのでしょうか。

三浦氏:福岡で暮らしはじめた頃は、新規で何かしらの依頼や相談があってもすぐに仕事につなげようとは思っていませんでした。ただ、元々代表の持留とは福岡に来る前からの知り合いで、協力して欲しいと声をかけてもらったことがきっかけです。事業内容に共感し、副業という形で関わるようになりました。福岡や九州の人たちとの出会いが広がることへの期待感もありました。

―― 福岡に移られてから、人とのつながりを広げるために何かしたことはありますか?

三浦氏:まずは、地元の経営者や起業家の方、経営企画・人事・広報などコーポレート部門ではたらく人たちと実際にお会いして、課題について聞いて回りました。そのこと自体は現職の業務内容にもつながると思っていたからです。すると、各者の意見から、共通の課題が見えてきたんです。

それは「どうやってより良い人を福岡にて採用するのか」「魅力的な人材に福岡への注目を集められるか」「そのような人に活躍の場をつくれるか」ということです。リモートワークが進み、どこでも働けるようになり、所属企業を変えずに暮らしの拠点だけを移す人も増えています。UターンやIターン者を地方企業が獲得しようにも、意外と難しい現実がある。その為、いかに自社に興味を持ってもらえるかという仕組みや仕掛けを作っていけるかが重要です。企業間の人材の流動性も首都圏と比べるとまだまだ低いですから、人材獲得の為の創意工夫も、人材を活かす仕組みづくりも、やれることが沢山あります。

福岡は行政をあげてスタートアップ支援をしていることもあり、起業家の数は年々増えています。ただ、経営は起業家だけではできません。右腕となるマーケティングやセールス、カスタマーサポートやコーポレートなど、それぞれの領域でいかに信頼できる人材を集められるか。さらに、メンバーが最大限パフォーマンスを発揮できるような組織カルチャーを作れるかが、非常に重要です。副業・兼業人材を活用してみたいとの声も耳にしています。

――なるほど。地域企業の皆さんが困っていることを聞きながら、つながりが増えていったんですね。

三浦氏:そうですね。さらに、福岡の企業の人事・経営企画・広報担当者が交流や勉強会をする、「越境×キャリア」をテーマにした有志によるコミュニティを、福岡にきて出会った地場企業の方々や、同じように福岡に移ってきた方々と立ち上げました。

地域企業のさまざまな人の話を聞いていくにつれて、「同じ悩みを話していた人がいた」「この企業とこの企業の課題は、引き合わせたら悩みの解決につながりそう」など、浮き彫りになる現実がありました。

加えて皆さん、SNSやウェブメディア上では、さまざまな情報を収集していますが、そこから具体的な課題解決のための行動をしようと思うと、リアルな実例を知る必要があります。そのために各企業担当者のリアルな接点が必要なんですよね。

―― コミュニティから新たな価値が生まれそうですね!

三浦氏:そうなっていくといいですね。福岡でも、会社づくりや人を採用し育てることに課題感があるのだとわかりました。とはいえ、東京のケースを真似しても仕方ないんです。

コミュニティの中で、お互いの知見や試行錯誤の様子をシェアしながら、地場の中小企業・スタートアップ関係なく、思いを持った人たちが会社づくりについて話せるようにしていけたらと思います。

コミュニティには私のように福岡で暮らし始めて間もない人もいるし、移って長い人もいる。いわゆる大企業の人もいれば、フリーランスやスタートアップ企業の人もいます。年代も性別も国籍も企業のフェーズや規模も含めて多様な人がいるコミュニティにしたくて、今は人のつながりで少しずつ広げている段階です。

福岡で立ち上げた「越境×キャリア」コミュニティで開催したイベントの様子(画像提供:三浦氏)

「東京」「地方」ではなく、どこにいてもやりたいことに挑戦できる未来を

―― 福岡に移って、心境の変化はありますか?

三浦氏:今のところは、東京と福岡を行き来できる環境に、「ありがたい」という気持ちが強いです。プライベートな面では、実家とも距離が近くなり、家族とのコミュニケーションや会う機会も増えました。

意外だったのは、東京から福岡に友人知人や仕事仲間が「三浦さんが福岡にいるから」と、遊びに来てくれるようになったんです。

私がきっかけとなり、九州を観光してもらえるのは嬉しいですね。何しろ、九州は生まれ故郷の大分県の別府や湯布院などの温泉はもちろん、長崎や熊本など歴史や文化、観光資源も豊富ですから。

福岡県内最大規模の日本庭園を有する大濠公園。ここで最近ランニングを始めているそう(画像提供:三浦氏)

三浦氏:仕事面では、これまで以上にプライベートとの境目が曖昧になっています。チャットツールのSlackや、Googleの各種ツールなどで連絡事項や業務内容を確認するなど、移動時間でも仕事を行います。私は、こうしたプライベートと仕事が地続きになっているスタイルが好きですが、福岡の皆さんと話をしていると、「仕事は仕事」「プライベートはプライベート」と、オン・オフの切り替えもはっきりしているように思います。

「地続き」と考える私との違いを感じる場面があり、もっと「地続き」な暮らしやはたらき方についての話をできる人と出会いたいから、コミュニティづくりをしているところもありますね。

―― いまの生活を満喫されているようですが、「地元に貢献したい」という思いは、福岡に移る前から持っていたのですか?

三浦氏:そうですね。大分出身ではありますが、九州が自分の地元という感覚が強く、思い入れがあります。特に福岡は経済規模も大きく、日本国内では東京、大阪、名古屋に次ぐ規模です。「東京だから」「地方だから」ではなくて、それぞれの場所にいる人たちがやりたいことに挑戦できて、その結果、街や人が豊かになっていくことを目指したいです。そのために、自分の会社づくりや組織づくりの経験スキルで貢献していけたら嬉しいですね。

―― 地方副業実践者として、地方への移住や副業に興味を持つ方が心得ておきたいことを教えてください。

地方での副業をしたい方も、まずは相手の話をよく聞くこと、目の前の人が何に困っているのか耳を傾けることが大切だと思います。やはり、人は感情で動く部分があると思います。自分も相手も周囲も、豊かになっていけるようなコミュニケーションができたらいいですよね。

(書き手:片岡 由衣/編集:永見 薫)

▼三浦孝文さんのインタビュー後編はこちら
本業・副業にシナジーが生まれる!副業経験者が語る社外での視点を持つ重要性

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