インタビュー

|

副業・兼業

キャリア

マネジメント

再現性のあるマネジメント能力とは?新規事業の伴走者から見た、組織を動かすために重要なこと

記事のまとめ

  • リーダーやマネージャーが組織を動かしていく上で、組織はさまざまな感情を持った人が集まっていることを認識することが大事

  • 会社、組織の目標を達成するために何をするべきか、自分ごととして考えられる人は、どんな組織にもフィットしやすい

  • 所属する組織ごとに求められる役割は異なるので、気負わずに新しい環境に飛び込む方が良い

組織を動かす力やマネジメントスキルは、在籍する会社内あるいは組織内でしか通用しないスキルだと考えることがあります。マネジメント力は可視化しづらいため、どう活かせばよいかわからないと不安になるビジネスパーソンも多いようです。

どんな組織に移っても培ったスキルを生かすことができる、つまりマネジメントスキルに再現性を持たせるにはどうすれば良いのでしょうか。企業のボトムアップによる新規事業支援として、企業内の仕組み作りや人材育成を行い、これまで5,000人超のさまざまな職種の現場リーダーをサポートしてきた株式会社インキュベータ代表取締役の石川 明さんに、再現性の高い「組織を動かす力」や「マネジメントスキル」について話を伺いました。

チームが気持ち良く仕事をするために、自分の機嫌を取る

——リーダーやマネージャーが組織を動かしていく上で、石川さんが最も大事だと思うことは何ですか?

石川氏:当たり前のようですが、人の気持ちを考えながら仕事をするということでしょうか。組織は理屈で動くものである一方で、組織の中ではたらいているのは人です。一人一人感情のある生き物ですから、そのことを頭に置いて仕事をすることが大事だと思います。

例えば、会社で新規事業立ち上げを任されたら、やり甲斐のある重要なミッションだからこそ「その仕事をやり遂げて完遂させなければ」と、関わる人の多くがそう思います。しかし、実は心の中では実は関わりたくないと思っている人もいるはずです。実際に経験してみると日々やることが多くて大変だし、事業が成功する可能性も低い。もし事業が成功しなかった場合、これまで積み重ねてきた自分の実績や評価をふいにしてしまうかもしれない、と躊躇する気持ちを抱く人もいるはずなのです。

このように組織では、さまざまな感情を抱く人が一緒にはたらいています。そこを理解せずに「新規事業のマネジメントを一度は経験すべきだ」という正論だけをチームメンバーに押し付けてプロジェクトを進めようとしてしまうと、誰もついてきてくれません。これは業務改革など、他の事業や業務においても同じことが言えると思います。

——著書『Deep Skill』の中で、プロジェクトを進める際には「正論ではなくて現実を見ましょう」と書かれています。リーダーやマネージャーがまず見るべき現実というのはどこにあるのでしょうか?

石川氏:日頃、私は企業の方から相談を受けますが、皆さんさまざまな悩みを抱えています。売上が伸びない、業界でのシェア率が下がり気味だ、社員の士気が落ちてきているなどという声があります。

このような相談には、「事実」「仮説」「意見」の3つが混在していることが多いです。「事実」「仮説」「意見」はそれぞれ異なるものですので、切り分ける必要があります。

「事実」に対して、“なぜこうなっているのかと考える”ことが「仮説」であり、「仮説」をもとに、“だからこうしていくべきだ”と示すのが「意見」です。

相談をしてくる方々は、相談を受ける私よりも事実をよく知っています。仮説についても、おそらくその領域で長年経験されているのであれば、私よりも深い仮説をお持ちです。門外漢の私にできるのは、具体的なアドバイスをすることよりも、思考の中で混在している事実と仮説と意見を解きほぐして整理するお手伝いすることです。

リーダーやマネ―ジャーが、メンバーから相談された場合でも同じかもしれませんね。例えば副業で新しい環境に飛び込んだ場合も、仮にその領域のことに詳しくなかったとしても、より客観的な立場で思考を整理するサポートならできるのではないでしょうか。

株式会社インキュベータ代表取締役の石川 明さん。創業以来、一貫して企業の新規事業開発に特化した専門サービスを提供している(写真提供:株式会社インキュベータ)

——石川さんのもとへ相談に来られる方のなかで、悩みに対する解像度が高い方はいらっしゃるのでしょうか?

石川氏:ほとんどいないですね。それが普通だと思います。一方で、課題を明確にしてからでないとコンサルや相談を受けてはいけないと思っている人が意外と多いです。コンサルタントに求めるものはさまざまですが、課題を明確にしていくプロセスにこそ僕らのようなコンサルの価値があるはずなんですけどね。

リーダーやマネージャーの方々にも、似たような状況があるのではないでしょうか。メンバーから相談を受けるときも、相談のひとつ手前のモヤモヤしている段階で声をかけてくれた方がサポートしやすいですよね。

モヤモヤしている段階でも部下が上司に声をかけてくれるのは、互いに信頼関係があるからです。そして何か声をかけられたリーダーやマネージャーは、モヤモヤしている段階で声をかけてくれた部下に対して「課題を明確にしてから来い」なんて怒ってはいけません。

——メンバーが話しかけやすい雰囲気を作るために、具体的にリーダーやマネージャーができそうなことはありますか?

石川氏:やはり機嫌の悪い顔はしていない方がいいと思います。眉間にしわを寄せている人に「ちょっといいですか」と声はかけづらいですよね。そのため、普段から機嫌良く過ごしていた方が良いですし、いろんな人と会話をしている姿を、周囲に見せられるとより良いのではないでしょうか。他の同僚が上司と話している姿を目にすれば、自分も気軽に話して良いのだと思えるでしょう。

私自身が組織の中ではたらいていたときは、小さな腰掛けを自席の横に置いていました。部下が声をかけてきた際に、「いいね、ちょっと座って話そうか」と声をかけてその場で座ってゆっくり話ができるようにしていました。あとは、オフィスで食べても違和感のないお菓子を用意していました。その際にはちょっと面白いお菓子を選んでおくと、それがきっかけになり会話が広がります。意外と効果がありましたよ。

会社や組織のことを考えられる人が強い

——マネージャー以外の話もお聞きします。石川さんから見て、どんな環境にいても組織を動かせそうだと思えるのはどのような人でしょうか?

石川氏:どんな組織でもうまくやれる人がいるのかは、正直よくわかりません。組織はナマモノであり、自分との相性が大きいと思っているからです。ただ、組織の持つ目標に対して達成しようという意識を途切れさせないことは大事だと思います。

例えば自分が「営業」をしていたとして、お客さんがなかなか決裁をしてくれないとします。そのような時に、「お客さんが煮え切らないせいで決裁が取れないです」と営業担当が言っていったら周囲はどう感じるでしょう。「そんなこと言わずに、受注をするために自分ができることを考えなきゃ」と言いたくなりますよね。

社内で起こることも同じです。例えば同じチームの上司が煮え切らない人だったり、部下の力不足があったりと、組織の中ではたらいているとさまざまな問題が日々起こります。そのような時に、誰かのせいにせず、このメンバーで目標を達成するにはどうすればいいのかを考えるべきです。自分には何ができるだろうと当事者として問題にどう取り組めるのかを考えられる人は、比較的どんな組織でも通用するのではないかと思います。

研修や支援先企業では、その企業が歴史的に培ってきた風土や人材の特性を尊重しつつ、会社の個性に合った仕組み作りを行っている(写真提供:株式会社インキュベータ)

——組織を動かす、特にメンバーをまとめることに課題を感じているマネージャーの方も多いと思います。石川さんはどのようなアプローチが効果的だと思われますか?

石川氏:細かなテクニックよりも、組織で仕事をすることの本質に真摯に向き合うことだと思います。まずは、“この組織が本当に達成したいことは何か”をはっきりさせること。その次に、“事実と仮説と意見を整理”し、メンバーの一人一人がどんな気持ちではたらいているのか把握すること。目標を見失わず自分に出来ることを考え続ける。一つ一つは小さいことかもしれませんがその積み重ねが大事だと思います。

例えば、副業でPM(プロジェクトマネージャー)のようなポジションを任される場合にも、初めて一緒にはたらくメンバーばかりだったとしても、こんな意識を持って臨めば大丈夫なんじゃないでしょうか。

——メンバーと普段からコミュニケーションを取ることは、大事だと思われますか?

石川氏:コミュニケーションを取れるに越したことはないと思いますが、それが得意な人ばかりではないですよね。もちろん対話は有効ですが、それに限らず信頼関係を築けていれば良いと思います。

メンバーがマネージャーのことを、“この人は自分が気持ちよくはたらいて力を発揮できるように配慮をしてくれる”、“何を大事に仕事をしている人間なのかを理解してくれている”と認識してもらえていると、お互いの信頼に繋がります。それを気付かせるために有効なコミュニケーションであれば、それは積極的に取った方が良いと思います。

“心理的安全性”とよく言いますけれども、普段の仕事の最中にこそ生み出せるようにすることが大事なのではないでしょうか。副業でプロジェクトに参画する際には、互いに接する時間が少ない分、信頼醸成のためにもコミュニケーションの取り方は丁寧にという意識が必要だと思います。

——マネジメントのスタイルとして、現在はプレイングマネージャーとして活躍される方も多いと思います。プレイングマネージャーがマネジメントを行う際に意識した方が良いことはありますか?

石川氏:まず一つは、マネージャーとしてだけではなくプレイヤーとして頼りがいがある存在になることが大事だと思います。そして、頼りがいがあるだけではなく、自分が行動の規範となり、メンバーによって自分のスタイルを再現できる状態を目指せると良いでしょう。結果を出すだけではなく、自分のスタイルや実績を作るプロセスを解説することを通して、自分以外のメンバーによる再現性にも目を向けられると良いのではないかと思います。

自分の行動を言語化するのは大変ですが、その経験は自分のプレイヤーとしてのスキルを高めることにもつながるはずです。

まずは無理に何かを探そうとせず、気楽にスキルを活かそうと行動することが大切と話す(写真提供:株式会社インキュベータ)

新しい環境に飛び込むことで得られる気付きこそ重要

——副業などでマネージャーとして新しい環境に入っていくとき、石川さんから見た再現性のあるマネジメントを行うにはどうした方が良いと思いますか?

石川氏:気負いすぎないことが重要だと思います。それぞれの組織の中には各々役割があります。ある組織内ではそれなりの役職であっても、違う場所に行けばその人がどう振る舞うべきかが変わる可能性の方が高いです。

例えばAさんは大きな会社の課長で、メンバーが20人いるとします。普段は、会議の調整や出張の手配は全て部下が担います。しかし、Aさんが社員5人の会社で副業を始めるとなると、これまでは部下がやってくれていたことも自分でやる必要が出てくるかもしれません。

所属する先々で、求められる役割は絶対に違いますよね。そのなかで重要なことは、組織の目標を達成するということです。これは、社内異動でも同じことが言えると思います。前の部署では通用したやり方が、異動先では通用しないなんてことはよくあります。だから、組織の目標に対して、“自分が何で貢献できるか”をベースに自分の役割を考えて、自分自身の振る舞いを変えていくことが重要なのです。

——副業の場合、プレイヤーとして参画することも多いと思います。その場合でもこのマインドは活かせそうですね。

石川氏:スキルを活かそうと変に意識しすぎない方が案外うまくいきます。「やってみたら思ったよりも手応えがあった」くらいの感触が良いと思います。ただし、上手くいったときには、“なぜ上手くいったのか”を振り返ってみると良いでしょう。

同じ会社の中で経験を積むことも素晴らしいのですが、環境が変わらないと視野が狭くなり違いが見えなくなってしまいがちです。そこで、違う組織の中に入ってみると、こういう組織もあるとか、メンバーはこういうことに結構悩むのだとか、違いが見えてくるわけです。

こうした違いに気づくためにも副業というのはすごく良いと思います。この気付きは、本業の方にも良いフィードバックができるはずです。本業でも副業でも、フラットな目線で、組織が一番上手くいくためには自分が何をやればいいのかを考えて行動することが大事だと思います。

(書き手:北原 舞/編集:永見 薫)

石川 明

株式会社インキュベータ 代表取締役

1988年に株式会社リクルートに入社以来、一貫して社内で新規事業を担当。1993年~2000年まで7年間、新規事業開発室のマネージャーとして、リクルート社の企業風土の象徴である、社内起業提案制度「New-RING」の事務局長を務め、新規事業を生み出し続けられる組織・制度つくりと1,000件以上の新規事業の起案に携わった。2010年に独立し開業。経済産業省主催「始動(グローバル起業家等育成プログラム)」講師・メンター/上智大学卒(1988)早稲田大学ビジネススクール修了(1993)/大学院大学至善館特任教授/明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科客員教授。直近の著書に『Deep Skill ディープ・スキル 人と組織を巧みに動かす 深くてさりげない「21の技術」』(ダイヤモンド社)がある。

あなたにおすすめの記事

Recommended

新着記事

New Articles

ランキング

Ranking

Follow Us

SNSをフォローして、お役立ち情報や最新のイベント情報を受け取りましょう

HiPro Direct

業界最大規模の転職サービス「doda」を運営するパーソルキャリア株式会社の
副業・フリーランス向けマッチングプラットフォーム「HiPro Direct(ハイプロダイレクト)」では、 様々なお悩みを解決し、あなたらしい働き方の実現を応援します。

  • 累計10,000人以上の
    副業者・フリーランスが登録

  • 日本を代表する大企業の
    副業案件も多数掲載

  • 地域副業に特化した
    コンテンツページも充実

  • 土日、週1、フルタイムなど
    さまざまな働き方が選べる

  • 掲載案件のうち90%が
    リモートワーク可能なお仕事

  • 短期1時間/回のスポットコンサル案件から
    副業可能(報酬1万円~/H)

HiPro Direct

HiPro Direct(ハイプロダイレクト)は、
dodaを提供する人材サービス大手
パーソルキャリアが運営しています。
私達は「はたらいて、笑おう。」を理念に持ち、
みなさまのキャリアに対する不安やお困りごとを
解決すべく、
また、その先にあるご自身のキャリアを
自ら描けるよう
「はたらく」を自分のものにすることを
応援いたします。