コラム
|リスキリング
副業・兼業
新しい仕事に挑戦したい人こそリスキリングを。その実践方法は?
記事のまとめ
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リスキリングの実践状況は3割弱と、学習や自己啓発に対して意識が高いとは言えない状況
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リスキリングで得たスキルを深める方法として、社内での異動で新しい仕事に取り組むこと、副業で新しい仕事に取り組むことなどがある
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政府の後押し、AI技術の発展により、リスキリングなどの学びは後押しされる状況が続くと予想される。スキルを習得して活躍の場を広げてみることが重要
AIなどの新しいテクノロジーが登場し、時代の転換期に突入し始めたといわれる昨今。産業構造に変化が訪れ、仕事の担い手が人からテクノロジーに分配されつつあるとも言われることがあります。だからこそ、人のキャリアを広げる為にも、リスキリングや学び直しなどでさらなるスキルを身につけることが求められます。
しかし、リスキリングや学び直しを経て、新しい仕事に挑戦するにはどうしたらよいのでしょうか。本記事では、リスキリングや学び直しを経て、キャリアチェンジする方法を解説していきます。
リスキリングを巡る社会動向
2022年岸田首相は「官民の人への投資を、早期に、少なくとも倍増し、さらにその上を目指していくことで、企業の持続的価値創造と賃上げを両立させていきます」と宣言。第210臨時国会のなかでも個人のリスキリング(学び直し)の支援に5年で1兆円を投じると表明しています。以降、日本社会でリスキリングへの注目度は高まっており、さまざまなバックアップ制度が用意されています。
経済産業省(以下、経産省)は、専門的・実践的な教育訓練講座として、経済産業大臣が認定する「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」を設けています。また、認定講座を受けた個人への給付金の支給や民間企業への助成金の交付を行っています。(2023年9月現在)
また独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、経産省で審査基準を満たしたDXに関する講座を提供。デジタル技術を中心に、リスキリングを誰でも実践することができます。
このように政府はリスキリングや学び直しを推進しており、はたらく人にとって特にデジタルに関するスキルは学びやすい状況にあります。
リスキリングの実践状況
それでは、リスキリングの実践状況を見ていきましょう。以下は株式会社パーソル総合研究所の「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」による調査内容です。この調査結果によると、日本における自己投資して学習している人の割合は24.2%。学習や自己啓発に対して意識が高いとは言えない状況です。
(画像引用元:株式会社パーソル総合研究所「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」)
またリスキリングに関して調査した、同研究所の「リスキリングとアンラーニングについての定量調査」では、リスキリング経験は30%前後と判明。現状では、まだまだリスキリングも自己学習も一般的ではないといえそうです。
(画像引用元:株式会社パーソル総合研究所「リスキリングとアンラーニングについての定量調査」)
職種別のリスキリング経験に関する調査では、技術動向のアップデートが早いIT系技術職、企画系の職種や営業系の職種におけるリスキリングの経験値が多くなっています。
(画像引用元:株式会社パーソル総合研究所「リスキリングとアンラーニングについての定量調査」)
リスキリングを促進する学び方とは
リスキリングを実際に促進する為には、どのような学び方が有効なのでしょうか。株式会社パーソル総合研究所によると、リスキリングと強く紐づいている学び特性が3つあるようです。具体的には、以下の表に記載された「アンラーニング」「ソーシャル・ラーニング」「ラーニング・ブリッジング」です。
(画像引用元:株式会社パーソル総合研究所「リスキリングとアンラーニングについての定量調査」)
アンラーニング
アンラーニングとは、新しい仕事のやり方やスキルを獲得するために古いやり方を捨てることです。過去に学んだことやこれまで用いてきた仕事のノウハウを捨てることに重点が置かれています。業務の具体例は、以下の通りです。
- 仕事の計画
- 仕事の手続きや方法
- 技術的な改善についての考えや信念
- 情報の収集共有方法
- 職務遂行のためのツール
- 組織を取り巻く外部環境についての考え方や信念
- 意思決定のプロセスや方法
- 顧客のニーズについての考え方や信念
アンラーニングを促進するのが、「これまでの仕事のやり方を続けても成果に繋がらない」という限界認知です。
限界認知の具体的な経験には、顧客との大きなトラブルなどの「業務上の修羅場」、他組織との共同プロジェクトや副業・兼業などの「越境的業務」、新規事業やプロジェクト立ち上げといった「新規企画・新規提案業務」などがあります。
ソーシャル・ラーニング
ソーシャル・ラーニングとは、「巻き込む学び」です。具体的には、「周りの人から意見をもらう」、「専門家や詳しい人に話を聞きにいく」などが挙げられます。
特に副業や社外のセミナーなど主に職場外の経験がリスキリングを促進します。
ラーニング・ブリッジ
ラーニング・ブリッジとは、学んだこと同士を結びつけて関連づける学びです。知識同士の共通点や、行動と知識を関連づける実践になります。
このラーニング・ブリッジは、日記やブログなどで自身の経験を記録することで促進されます。
ここまで3つの学びについて解説してきましたが、このように、それぞれの特性を意識しながら実践することで、学びがより深まっていきます。
リスキリングで得たスキルを深める方法
リスキリングで得た知識を使い、新しい仕事に挑戦するためには、学びを実践する業務の実経験が必要不可欠です。そのためにはどんな方法があるのでしょうか。業務経験を得るための具体的な方法を2点ご紹介します。
社内での異動で新しい仕事に取り組む
まず、最初の方法として社内での異動という方法が挙げられます。企業によっては、社内の公募システムが制度化されているケースがあり、その制度を活用することで新しい業務に挑戦できるでしょう。
副業で新しい仕事に取り組む
もう一点は、副業で新しい仕事に取り組む方法です。
株式会社パーソル総合研究所の「第二回 副業の実態・意識に関する定量調査」によると、副業人材を、受け入れている企業は23.9%、受入意向のある企業が23.9%と合計で47.8%の企業が副業者の受入に前向きな姿勢を持っています。
また、従業員人数1万人以上の大企業では、新規事業の立ち上げやオープンイノベーションを目的として、副業人材の受け入れの実施や意向が高い傾向にあります。
受け入れたい副業者の上位or主な職種は、以下の通りです。
- 営業 19.6%
- ITエンジニア15.6%
- 情報システム関連13.7%
上記の割合から、主にIT職関連の人材の需要が高いことがわかります。
(画像引用元:株式会社パーソル総合研究所「第二回 副業の実態・意識に関する定量調査」)
また、パーソルキャリア株式会社の調査「副業人材活用の実態と2023年のマーケット予測」によると、副業人材を活用した企業の72.9%が取り組み結果に満足していると判明。決裁者の約半数が、副業人材の活用を強化したいと回答していることからも、副業で働く場はこれからさらに広がっていくものと考えられます。
(画像引用元:パーソルキャリア株式会社「副業人材活用の実態と2023年のマーケット予測」)
リスキリングを経てキャリアチェンジする方法
リスキリングを実践し新しいスキルを獲得した後、新しい仕事に挑戦するには、実務経験を得る必要があります。リスキリングで獲得したスキルを本業で使用するのはもちろん、未経験可の副業から少しずつ実践していくことで実務経験を得る方法もあります。
スキルの獲得・実務経験を積み上げることで、社内での異動や転職・独立などの新しいキャリアの可能性が高まります。
リスキリングによってスキルを獲得するだけでなく「実践すること」が、新たなキャリアを開くための重要事項といえるでしょう。
まとめ
政府の後押し、AI技術の発展により、リスキリングなどの学びは後押しされる状況が続くと予想されます。ぜひスキルを習得して活躍の場を広げてみてはいかがでしょうか。
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(書き手:中 たんぺい/編集:永見 薫/監修:HiPro Direct編集部)