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セールスアドバイザー向井俊介氏が語る!営業組織を変革に導く戦略的な人材活用とは

記事のまとめ
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営業型組織における営業とは「契約して、プロジェクトを走らせ、売上を回収していく」までの一連業務
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職務ごとの分断を解決するためには「実はみんな営業職として働いていて、KGI(経営目標達成指標)は売上だ」と共通認識を持つことが重要
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営業組織のスキマに落ちているジョブや課題を明らかにしていきながら、プロ人材の活用と自社での採用を「or」ではなく「and」で行うことが営業組織の強化につながる
顧客のニーズや営業組織の役割変化が激しい時代――だからこそ、柔軟で強固な営業組織を作り、成長させていくことに悩む人も多いのではないでしょうか。
去る6月28日(水)、パーソルキャリアが運営する副業・フリーランス人材マッチングプラットフォーム「HiPro Direct(ハイプロダイレクト)」は、”HiProDirect×ZENFORCE”と題し、セミナー「営業組織を変革に導く戦略的な人材活用とは」を開催しました。
ゲストのゼンフォース株式会社外部顧問 兼 エバンジェリストの向井 俊介氏からは、営業組織の抱える問題点と、これらを打破する変革方法について解説していただきました。
セミナーの後半では目指したい営業組織の体制構築の方法について、パーソルキャリアの大里 真一朗より解説し、最後は2人のトークセッションが行われました。
盛況のうちに閉会したセミナーのセッション模様について、レポートしていきます。
登壇者

向井 俊介氏
ウェルディレクション合同会社CEO
ゼンフォース株式会社
外部顧問兼エバンジェリスト
IT業界において約20年間、中小から大企業のB2Bの営業領域の職務に従事。国内上場企業から外資上場企業、外資スタートアップの様々な企業に属し、CxO等エグゼクティブビジネスも多く経験。毎年成績上位者に名を連ね、グローバルNo.1のセールス実績やグローバルNo.1のマネージャーにも選ばれるなど、数々の実績を残した。現在ウェルディレクション合同会社CEOを務めるとともに、ゼンフォース社では外部顧問 兼 エバンジェリストとして、同社の事業成長に貢献している。

大里 真一朗
パーソルキャリア株式会社
タレントシェアリング事業部 Bussiness Innovation統括部
エグゼクティブマネジャー
大学を卒業後、パーソルキャリア株式会社(旧:インテリジェンス)に入社。人材紹介の法人営業、営業企画、金融機関等とのアライアンス推進等を担い、最大100名以上のマネジメントを経験。その後、新規事業開発に従事し、PERSOL MIRAIZ(toCサービス)やHRアナリスト(toBサービス)の立ち上げ、グロースに寄与。
現在はタレントシェアリング事業部にて、複数サービスの立ち上げに携わる傍ら、副業・フリーランス人材と企業を直接つなぐマッチングサービス「HiPro Direct」の事業責任者も務める。
営業組織に今求められていること
向井:ゼンフォース株式会社の向井と申します。本日は、継続的に組織成果を出している営業マネージャーはどのような考えを重視して行動しているのか、お話をできればと思います。
受注率が上がらないという悩み
向井:早速本題についてお話ししていきます。まず営業組織でよく見られる、受注率が上がらないという悩みについて考えていきましょう。

事業責任者や経営者の方々は、日夜その課題を解決すべく、フィールドセールスの教育の改善を行うなど、さまざまな施策を打っているかと思います。
ただ、課題に対しての打ち手が不十分であることは、決して少なくありません。その受注率が上がらない原因として、フィールドセールスのクロージングに対するアプローチだけではなく、営業プロセス全体でボトルネックになっているポイントが複数あるからです。
原因の一つを例として挙げると、顧客ターゲットが不明瞭なために、受注を上げるためのストーリーがブレてしまうといったケースがあります。
営業プロセスのボトルネックになっているポイントを特定し、取るべきアクションを探していくことが重要です。私は現在、このようなポイントの特定と、次なるアクションに向けたサポートを行っています。
組織における営業職の定義とは
向井:次に営業という仕事の役割について、整理していきたいと思います。概念的な部分について申し上げると、営業とは「継続的に利益を創出する活動及びそれに従事している組織」のことを指します。

さらに視野を広げ、大きな視点で見てみましょう。
組織の形態である、株式会社・合同会社・合資会社と言われる営利組織は、利益を出すことが求められています。そのため、これらの会社に所属しているあらゆる部門の人たちは、利益を出すという目的に向かって走り続けているため、「営業活動」をしているといえます。
利益を創出する方法は、「売上拡大」「コスト削減」「リスク低減」と3つのポイントがあります。この中で、特に「リスク低減」は、見落とされがちなポイントですが、利益を創出するための重要な要素です。
例えば、情報漏洩の事例をイメージしていただけるとわかりやすいかと思います。とある製造業でこれから発表する製品の図面が、人的なセキュリティのミスによって流出したら、企業の利益に響きますよね。このように、実はリスクを下げるという観点は、利益を上げるためにも大切なポイントなのです。
営業型組織における営業とは
向井:次に、営業型組織における営業活動についてお話しします。前述の通り営業活動とは「売上の創出」ですが、これを具体的に述べると、「受注をしてその売上額を回収すること」といえます。営業を担当される方のなかには、売上回収業務に対してあまり意識を向けられない方もいます。しかし売上回収業務は、営業の重要な仕事の一つです。契約して、プロジェクトを走らせ、売上を回収していく。ここまでの一連の活動が営業の業務なのです。

一方、営業職の中にはさまざまな役割があります。その役割は、お金を受注し、回収するだけではありません。下図のように営業に準ずる職務があります。その結果、職務と職業の境界が曖昧になったり、逆転したりして、組織に弊害が生まれる場合があるのです。

続いて営業と販売の違いについて見ていきましょう。
まずセールスという言葉について触れます。これを日本語に訳すと「販売」になりますが、販売は営業の要素のひとつです。私の解釈だと、営業職は「売ることによって顧客の困りごとを解決」する職業です。一方で、販売職、つまりセールス職は手法やテクニックによって売ることを目指していると捉えています。

営業職と販売職の役割が混じりあってしまうケースは企業内でも多いので、これらの職業の目的と手段について、ぜひ再考してほしいと思います。
営業組織で起きている問題
向井:ここからは昨今の営業組織で起こりやすい問題について、話をしていきます。
現代の営業組織は、営業プロセスとして「マーケティング」「インサイドセールス」「フィールドセールス」「カスタマーサクセス」と4つのパターンに分けています。これは、セールスフォース社が実践している「The Model」の組織形態を採用しているというケースがあります。
その際によく発生する問題は、それぞれの決めた役割に集中してしまい、最終的なゴールである売上獲得という目的が見えなくなるということです。
例えば、マーケティングが、リードの獲得のみに集中して、セミナーを開催する、幅広くにメールマガジンを送るものの、受注にまで至らないというケースなどが一例です。
またインサイドセールスが、アポイントを取るために、展示会で名刺を獲得できたら、ひたすら順番に連絡をしていくこともそうでしょう。
フィールドセールスは、取れたアポイントに電話をかけても受注につながらず、「顧客のニーズの高いアポイントを獲得して欲しい」と思ったり、カスタマーサクセスはフィールドセールスが受注した案件に対して不満を募らせたり、といったことも起こるかもしれません。
このようにそれぞれが自身の職務ごとのKPI(重要業績評価指標)を達成することに、集中してしまうのですね。
結果、インサイドセールスはKPIを達成しているのに、営業組織全体の受注の達成率が未達になるというような問題にも繋がることがあります。
営業組織の中で、職務ごとに軋轢が生まれてしまうといったような事象も発生し、組織として、不和な状態に陥ることも少なくありません。
この職務ごとの分断を解決するためには、「実はみんな営業職として働いていて、KGI(経営目標達成指標)は売上だ」と共通認識を持つ必要があります。そして、職務を横断してコミュニケーションを取り、ひとつの目標に向かうことが重要です。
具体事例を挙げますと、マーケティングの悩みである、どのようなリードを獲得すると売上に繋がるのかは、顧客と接しているカスタマーサクセスやフィールドセールスに尋ねることがおすすめです。
一方で、フィールドセールスやカスタマーサクセスの人たちは、マーケティングやインサイドセールスに作って欲しいコンテンツをお願いするのがいいかと思います。
最終的に当人達が協力して、熱量を上げながら動いていくという部分が営業組織では重要です。
組織の問題が起きた際に振り返りたいポイント
向井:組織の問題を解決するためには、次の4点を振り返って欲しいと考えています。

まず、1つ目が営業に対する解釈を合わせることです。次に、職務評価がKPIに偏っていないかということ。3つ目がKGIを達成するために、KPIが設定されているかということ、最後が成果目標と行動目標のみ達成されているかということです。
これらの4つの原因には共通点として、コミュニケーション不足という課題があります。
Slackなどのチャットツールが普及し、テキストコミュニケーションが主流になったため、感情面の情報共有がしにくくなりました。それによって、マネージャーの言葉の意味とそれを受け取るメンバーの解釈が一致しにくくなり、誤解が生じています。こうした課題を解決するためにも、IQ(頭脳)ではなくEQ(心)を使って、人間同士で対話していくようにしましょう。
営業組織における組織づくりのポイント
続いて、セッション2では、パーソルキャリアの大里より、営業組織における組織づくりのポイントについて、ご紹介しました。
大里:現在、営業組織の課題として、営業の育成を課題として考えている企業が多いです。そう回答している企業はおおよそ3社に1社の割合となっています。課題の要因として、育成できる人材の不足や、時間の不足という点が挙げられています。また、市場状況としては、専門スキルの高い人材は採用の難易度が高い傾向にあります。

こうしたシチュエーションに有効なのが、営業組織のスキマに落ちているジョブや課題を明らかにしていきながら、プロ人材を活用することです。

ただ我々としては、プロ人材の活用にとどまらず、採用は継続しながらも並行して、業務を切り出し、副業・フリーランスにお願いすることが望ましいと思っています。「or」ではなく「and」で人材を登用していくということですね。課題や事業フェーズの段階を見ながら、どの人材を活用するかをフラットに見ていけばいいのかと思います。
大里:営業組織を強化するにあたり、「営業」についてもっと言語化する必要があるかと思います。そのためにはどのようなことから取り組めばいいのか、もしコツがあれば教えていただけますでしょうか。
向井:トレーニングのような感覚で、「言語のセッション」を開催することや、1 on 1形式で、相手に言葉で具体的に説明することを繰り返すのも有効です。
これまでの経験で興味深かった事例は、自分たちの会社にとっての営業活動について、議論しながらまとめていくワークショップを開いた企業がありましたね。
大里:ありがとうございます。言語化が進まない課題に対して、有効なアプローチがあれば教えていただけますか。
向井:「暗黙知」を言語化する手法として、「SECI(セキ)モデル」という手法があります。個人のもつ知識を全社で共有して、新たな知識を生み出し経営に活かすナレッジマネジメントの理論のひとつです。例えば、とある商談の交渉プロセスを録画した動画を見ながら、その時に話した内容の理由や、話し手が考えていたこと、質問の意図などを、俯瞰しながら確認し、行動一つひとつから、理由を表出化させていくという試みをしています。ぜひ興味のある方は、やり方を学んで実践されるとよいのではないでしょうか。
大里:では、最後にメッセージをお願いします。
向井:自分の体を大事にしながら、楽しく仕事に取り組んでいただければと思います。
大里:本日はありがとうございました。
編集後記
本セミナーでは「営業組織を変革に導く戦略的な人材活用とは」をテーマに、ZENFORCE社の向井氏に、営業組織を強化するためにどのような人材が必要なのか、また現在在籍する人材をどう強化していくかについて話していただきました。
向井氏は今後営業組織の強化を鑑みた際に、既存の人材を確保するべく採用活動は継続しつつも、業務の切り出しを行い、副業・フリーランスにお願いすることが望ましいと提言していました。
今後は「or」ではなく「and」で人材を登用していくことが肝要なのでしょう。
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(書き手:中 たんぺい/編集:永見 薫/監修:HiPro Direct編集部)