イベント
|イベントレポート
副業フェス2023
【副業フェス2023:イベントレポート4】「スタートアップにおける副業人材活用のリアル」

記事のまとめ
-
企業は副業人材に「プロ意識」を期待して良い
-
副業人材を活用するポイントは、「会社の未来像の共有」にある
-
副業人材の活用では、グローバルに働く人を仲間にするチャンスがある
パーソルキャリアが運営する副業・フリーランスマッチングプラットフォーム「HiPro Direct(ハイプロダイレクト)」は、“副業というはたらくの選択肢が当たり前”となる社会を実現するための一歩として「副業フェス2023」を開催しました。(2023年2月9日開催)
第二部の二つ目のセッションでは、オンラインフリースクールを運営するSOZOW株式会社の佐藤 毅氏と、オンラインでのキャリアコーチングを提供するカメレオン株式会社の川上権 祟郎氏が登壇しました。テーマは「スタートアップにおける副業人材活用のリアル」です。ほぼ全文書き起こしでお伝えします。
※セッション1のレポートはこちら:「大企業における副業人材活用のリアル」を読む
※セッション2のレポートはこちら:「地域における副業や、副業人材活用について」を読む

プロ意識を持った副業人材とはたらきたい

土井:今回は、スタートアップの副業人材の活用というテーマでお話を聞かせていただければと思います。まず、2人のプロフィールと副業人材への想いをお聞かせください。
佐藤:SOZOW株式会社の佐藤と申します。僕たちは「子どもたちの好奇心と可能性を解き放ち、未来をSOZOWする学びの生態系をつくる」をミッションに掲げ、教育の選択肢を増やすために、オンラインを活用した習い事・ボーダレススクール・イベントの3つの事業を展開しています。
副業の方は、主にボーダレススクールの事業で活躍いただいております。ボーダレススクールとは、アバターを使って参加できるオンラインのフリースクールです。この事業では、スタッフによる個別のサポートを子どもたちに提供していて、そのサポート役として大手企業の事業責任者を担っている方や元プロサッカー選手の方などが副業ではたらいています。
土井:多様な人が活躍されているんですね。副業人材を活用している理由は何でしょうか?

佐藤:理由は二つあります。企業活動の中心にいる子どもたちに多様な人材に触れてほしいということと、自身の興味がある人と関わりながら安心感を醸成してほしいという想いです。子どもたちと関わる仕事のため、副業ではたらく方の考え方や副業する理由も重視しています。
川上:株式会社カメレオンの川上です。弊社では、自分の望んだキャリア形成を実現するためのオンラインコーチング事業を営んでいます。3ヶ月〜1年の期間でキャリアを一緒に考え、転職活動で成果を出すまでコーチが伴走することが特徴のサービスです。
会社としては、約400名のメンバーがいるのですが、その77%は副業で携わっています。その中でも、コーチとカウンセラーとしてはたらいている人は多く、コーチの約90%は副業人材です。
土井:約90%が副業人材とは驚きました。どんな資質の方が御社にマッチされると考えていますか?

川上:仕事への想いが強い人は活躍しやすい場だと思います。「副業だから軽くやろう」というマインドではなく、「本業と同じ思いで、全力で取り組もう」というプロマインドで仕事に取り組むことを望んでいる人ですね。想いがない仕事はただの作業になってしまいます。パワフルに成果へコミットしていただきたいと考えているため、「本気ではたらこうとしているか?」という姿勢を面談ですり合わせています。
副業では多様な人材を活用できる

土井:正社員や派遣社員を採用する選択肢がある中で、副業人材を増やしている理由は何でしょうか?SOZOW様もカメレオン様も、副業人材を活用している割合が高いですよね。
川上:「成果を追い求めたい」と考える人が、副業人材には多いと感じています。この副業人材の特性と、我々がプロフェッショナル契約と呼んでいる業務委託契約との相性が良いんですよね。副業人材は成果を追い求めて自分の専門性を発揮したい。会社は成長したい。双方の想いが「副業」という一点で重なりました。
佐藤:僕たちは子ども達にさまざまな価値観を届けていきたいと考えています。そのためには、多様な人材が必要になります。ですが、はたらく会社に正社員のポジションしかなければ、採用できる人材は限られます。スタートアップに正社員で転職するのは、勇気が必要です。でも、副業ではたらければ転職をする必要はなくなります。「子どもたちを支援したい、転職はハードルが高い」と思う方が応募しやすくなるんですよね。
実際に副業人材の募集を始めたら、応募数が格段に増えました。応募いただいた方の話を聞くと、「社員として飛び込む勇気はなかったけど、副業で子どもたちと関われてよかった」とおっしゃっていただけましたし、副業人材を活用している効果を感じています。
副業人材活用のポイント

土井:これまで多くの副業人材と一緒にはたらいてきて、活用のポイントはどこにあるとお考えでしょうか?

川上:やはり副業人材を活用する上では、チームマネジメントが難しくなると感じています。雇用関係ではないので、企業としての価値観や目標を共有しにくく、ドライな関係になりやすいのです。試行錯誤しながらチーム作りに取り組んでいるのですが、メンバーの方との意識レベルを合わせるために、「僕たちがつくりたい未来像」を伝える機会ーたとえば、社内で「魂会」という本音で魂を擦り合わせる会議を開催しています。規律やルールでマネジメントするのではなく、想いを伝え合って、深いつながりを作って自走していく。そんな組織を目指しています。
土井:ありがとうございます。業務委託や正社員の隔てなく、同じ志を共有し合おうと取り組んでらっしゃるんですね。佐藤さんいかがでしょうか?。
佐藤:僕たちは「同じ目線でプロとして仕事をしていただけるか」を重視しています。僕たちの事業は子どもたちが主体です。サポートする方の何気ないひと言が、子どもたちに大きな影響を与え、感情や行動を変える可能性があるため、副業人材の方にもプロ意識を求めています。
プロ意識を持っている人とはたらくためにも、面談では志望者の目標を確認し、こちらの目標も説明し、互いの目線がマッチするように心がけています。特に子どもたちとの向き合い方、実現したいことについては、しっかり聞くようにしています。
ただ、最初の面談でお互いの目標がマッチできたとしても、業務を始めると考え方のギャップは必ず出てきますよね。そのギャップを埋めるためにも、コミュニケーションには力を入れています。
土井:フルリモートで、副業の方々とコミュニケーションを取る際に、「どこまで踏み込んでいいのか?」という部分はどのように対応されていますか?

佐藤:副業の方々と関わる時に、こちらからのお願いをする時に、意識がズレて、仕事への干渉になってしまうことはよくありますよね。
僕たちの会社は、オンラインフリースクールの事業を展開しているので、プラスガイドという担任の先生の役割を担う社員がいます。プラスガイドの方達は、副業で関わってくださる方と日々のコミュニケーションをとっています。
ひとつのチームの人数は、1人のプラスガイドに対して、約20人の副業の方です。このチームの中で、チームでの定期的な振り返り、副業の方だけのミーティング、棚卸会などを実施。会社員と副業の方の接点を増やして、目線を揃えるようにしています。
副業人材活用において挑戦したいこと

土井:最後に、副業人材の活用において、今後挑戦したいことをお聞きできればと思います。

佐藤:グローバルにおける副業人材の活用に挑戦したいです。パソコンとインターネットがあれば住んでいる場所に関係なくコミュニケーションを取れますので、人材活用を国内に縛る必要はないと思っています。
日中にワークできる優秀な方の活用はもちろん、時差の影響を考慮して、こちらが稼働していない時間にご活躍いただくこともできます。副業を国内だけで考えず、グローバルも視野に入れながら、新しい副業人材の活用に挑戦していきたいです。

川上:我々は副業のキャリアパスを作っていきたいと考えています。新しい事業を作り、現在の業務で実績を出している方がステップアップできるような環境を提供したいですね。
弊社は「人生のターニングポイントを提供する」というコンセプトでサービスを提供していますが、お客様だけではなく、社員や副業ではたらいている方の人生のターニングポイントも作っていきたいです。
編集後記
第二部の二つ目のセッションは、多様な副業人材と共に事業を推進するスタートアップの立場から議論が展開されました。
「副業であってもプロフェッショナルとして参画してほしい」といった活用側の本音や、「転職よりもハードルの低いスタートアップへの参画方法として副業を使う」といった副業者目線の本音もありました。
副業人材の活用はまさに過渡期です。新しい人材活用の仕方として副業が定着するか、今後も注目されることでしょう。
次は形を変えていく副業の中でも、コロナ禍やリモートワークの普及によって注目を浴びている「地方副業」に焦点を当てます。新しい副業の形が、はたらき方と外部人材の活用のあり方をどう変えるのか。ご注目ください。(次のセッションのレポート記事はこちら:「地域における副業や、副業人材活用について」を読む)
●その他のレポートはこちら
※オープニングトークセッションのレポートはこちら:「個人も企業も副業を選ぶ時代になっている理由」を読む
※第一部トークセッションのレポートはこちら:「副業のリアルを副業の専門家と実践者が語る」を読む
※第二部トークセッション セッション1のレポートはこちら:「大企業における副業人材活用のリアルについて」を読む
※第二部トークセッション セッション3レポートはこちら:「地域における副業や、副業人材活用のリアルについて」を読む
(書き手:たんぺい/編集:佐野 創太/監修:HiPro Direct編集部)